サッカー豆知識

大学でサッカーの技術、用具を長年研究する専門家が教える、スパイク選び3原則

サカイクには、子どもたちや保護者からたくさんの悩みが届きます。なかでも多いのが「スパイク選び」に関するものです。「スパイク選びのポイントは?」「どんな素材がいいの?」「買い替え時は?」など、疑問に思うことがたくさんあるようです。

そこで今回は、筑波大学体育専門学群でサッカーの技術や用具の研究を続ける浅井武教授に、正しいスパイクの選び方を教えてもらいました。これを読んで自分に合ったスパイクをみつけ、試合で活躍できる選手を目指しましょう!  (記事提供:アディダス ジャパン株式会社/取材・文 鈴木智之)

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キックの分析やサッカー用具の研究を行っている浅井教授は、子どもたちがスパイクを選ぶ際に大切なポイントを、次のように話します。

「お子さんがスパイクを選ぶときに、デザインがかっこいい、あこがれの選手が履いているなど、選ぶ理由は様々です。それも良いのですが、前提として『自分の足の形に合ったスパイクを選ぶこと』が大切です」

足の形は人それぞれです。足の甲が高い人、低い人、横に広い人などがいます。

「子どもの足は大人と違うので、発育発達に合ったスパイクを選びましょう。子どもの足は、大人の足の縮小コピーではありません。子どもの足は関節が柔らかくて弱いので、足の動きや変化に対して、サポートしてくれるスパイクが良いと思います。最近は、プレースタイルに合わせた機能が搭載されているスパイクもあるので、そちらもおすすめです」

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成長途中の子どもの場合、大人以上に様々な視点を加味して、スパイクを選びたいところです。浅井先生は、スパイクを選ぶときのポイントを3つ挙げます。

それが、「ためし履きをするときは、靴ひもを緩める」「つま先は0.5~0.8cm、余裕を持つ」「横幅は、親指の付け根と小指の付け根がフィットするものを選ぶ」です。

■ためし履きをするときは、靴ひもを緩める

「お店でためし履きをする時は、靴ひもを下まで緩めて足を入れましょう。結び目だけをほどいて足を入れると、しっかりフィットせず、きついと感じることもあります。そうなると、足に正しく合っているかどうかがわからないので、まずは靴ひもを下まで緩めることから始めましょう」

■つま先は0.5~0.8cm、余裕を持つ

「スパイクに足を入れたら、かかとの位置を合わせましょう。ヒールカップにかかとを当てはめて、足の長軸方向(注・かかとからつま先まで)のフィット感を確認します。つま先は0.5~0.8cmほど、余裕を持っておくこと。つま先がキツキツのスパイクを履いていると、荷重をかけたときに爪を傷めることや、足の変形につながるおそれがあるので、長軸方向に少し余裕のあるサイズを選びましょう」

■横幅は、親指の付け根と小指の付け根がフィットするものを選ぶ

「長軸方向のフィット感を気にする人は多いですが、実は横幅も大切なのです。横幅とは、親指と小指の付け根の、足のもっとも広い部分のことです。そこのサイズが合っていなかったり、キツいスパイクを履いている場合は、プレー中に荷重すると足裏のアーチに制限がかかることがあります。結果として動きが悪くなったり、足を攣る原因にもなるので気をつけましょう」

スパイクはサッカー選手にとって、唯一ともいえる武器。自分の個性、能力を十分に発揮するために、力になってくれるスパイクを選びたいものです。

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「人によって、プレーしやすいスパイクは違うと思います。プレーの目的に合ったデザイン、性能のスパイクを選ぶことは理にかなっています。たとえばキックを重視したい選手であれば、ただ単に強く蹴ればいいのではなく、ボールの回転が重要です。その場合はボールの回転をコントロールしやすいスパイクを履くといったように、プレースタイルを基準にスパイクを選ぶのも良いと思います」

■プレースタイル別、スパイクの選び方

ここからは、プレースタイルに合ったスパイクを紹介します。自分のプレーをサポートしてくれるスパイクを履きたい人は、参考にしてみてください。

・コントロール重視の選手はPREDATOR(プレデター)

「キックのコントロールに、良い影響を与えるために作られたモデルですね。ボールに回転をかける時に威力を発揮し、ループシュートのスピンや無回転シュートを蹴るときも回転を制御しやすい。ボールコントロール性が高いスパイクだと思います」(浅井先生、以下同)

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・ボールタッチ重視の選手はCOPA(コパ)

「ボールタッチを重視する選手は、スパイクを通してボールの情報が足にたくさん伝わるデザインがおすすめです。コパは大人のサイズ(24.5㎝から)のみしか展開がありませんが、トップモデルには天然の革を使っているので、履いているうちに馴染みますし、足へのフィット感も高まると思います。カカトの安定性もあるので、細かくボールタッチするときにサポートしてくれます」

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・スピード重視の選手はX(エックス)

「陸上シューズをサッカースパイクにしたような、縦のスピードやハイインテンシティの動きに対応するデザインです。軽いシューズは疲労しにくいので、1試合に何度もスプリントする選手には良いと思います。材質も特殊で撥水性が強い。これなら、雨が降っていても水を吸って重くならないので、スピードに影響が出ないと思います」

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・アジリティ重視の選手はNEMEZIZ(ネメシス)

「ひと目見て、360度の動きに対応するデザインだと感じました。アッパー部分を見ると、テーピングのテープのように、骨と同じ方向へ線が走っています。これにより可動範囲を制限しすぎず、安定した動きがサポートされます。前後左右に複雑に動くとシューズがねじれて、足首の固定が弱まることがあるのですが、そうならず、動きに対してぴったりついてきてくれるデザインです」

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アディダスの最新スパイクには、2,000人ほどの足データに基づいて作成された足型「ネオジャパニーズマイクロフィットラスト」が搭載されています。かかとのホールドや土踏まずのサポート、足指の自由な動きなどのサポート機能があり、疲れにくく、踏ん張りやすいので、成長期のお子さんにおすすめです。

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■買い替えのタイミングは?

浅井教授によると、「スパイクは消耗品なので、毎日のように履く場合、1年はもたない」そうです。

「スパイクは半年から9ヶ月ぐらいのスパンで買い替えた方がいいでしょう。土のグラウンドでは、乾いているときと濡れているときでコンディションが違いますし、天然芝と人工芝では、グラウンドの硬さが違います。地面からの突き上げも変わり、身体が受ける衝撃も違うので、それぞれの芝に合わせたシューズを選び、履き替えることをおすすめします。それが技術発揮の観点からも、身体を守る意味でも良いと思います」

最後に、スパイク選びに悩むお子さん、保護者に向けて、メッセージをいただきました。

「子どもたちは、あこがれの選手がするプレーを見て、真似しますよね。すごいフリーキックを蹴る選手がいて、『自分もあのキックがしてみたい!』と思ったら、繰り返し練習することに加えて、どのようなスパイクを履くと、より良いキックができるのだろうかと考えてみるのも良いと思います」

さらに、こう続けます。

「目標の実現に向かって、サポートしてくれるスパイクを選べば、パフォーマンスの向上にもつながるでしょう。なにより、良いスパイクを買うと『もっとこれを履いて練習したい!』という気持ちになりますよね。モチベーションにも影響すると思うので、目的を持ってスパイクを選んでもらえたらと思います」

保護者に向けては「お子さんの長所を伸ばすサポートをしてあげてください」と、笑顔で語りかけます。

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「お子さんのスパイクを選ぶ時は、得意なプレーを発揮しやすいものを選んであげるのも、ひとつの方法だと思います。足は遅いけどキックが上手な子であれば、速く走るために軽いスパイクを選ぶのではなく、キックをサポートしてくれるスパイクを選ぶといったように、その子の個性、長所を伸ばすことに目を向けてあげるといいと思います」

浅井教授の話を聞いて、いままで何気なく選んでいたスパイクに対して、新たな視点が加わったのではないでしょうか。さあ、新しいスパイクを履いて練習を楽しみ、得意なプレーを磨きましょう!


浅井武(あさい・たけし)
筑波大学体育系教授。工学博士。研究分野はスポーツバイオメカニクス、スポーツ工学。日本人スポーツ研究者としては、はじめて国際物理科学雑誌『Physics World』に論文が掲載。モーションアナリストとして、また、キック研究の第一人者として、新しいサッカーボールやスパイクの開発にも携わってきた。名門・筑波大サッカー部の顧問も務めるなど多方面で活躍する。

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記事提供:アディダス ジャパン株式会社/取材・文 鈴木智之